銀座の野菜

3年ぶりに銀座を歩いた。無くなってしまった店や見知らぬ店もある中、こちらのお店が健在だったのは嬉しい。吸い寄せられるように入店したのは「よもだそば」。蕎麦のツユでラーメンを食べる「ラそば」や、蕎麦屋なのにカレーが美味いといった一風変わった店としてテレビでもたびたび取り上げられる有名店だが、決して奇をてらった店ではない。自家製の生蕎麦にカツオ、サバ、ソーダ鰹、ウルメ鰯、昆布で取ったダシは、立ち食いとは思えぬクオリティを誇る。

 

「牧場ゴボウのかき揚げ天そば」を注文。普段ならうどんを頼むところだが、ここに来たらやはりそばを食べたい。

 

メニュー名にも使われている「牧場」とは青森県の東北牧場のこと。天ぷらなどに使う野菜が東北牧場であることがこの店の売りのひとつになっている。

 

大半の客は気にも留めないかもしれないが、ベテランの競馬ファンなら「おや?」と思うことだろう。そう、ケイワンバイキングやクロックワークを生産したあの東北牧場だ。生産牧場としては「フォレブルー」名義に変わったが、生産馬のギシギシが南関東の短距離路線で活躍しているし、スピルバーグベルシャザールといった種牡馬も繋養している。そんな東北牧場さんでは、生産の現場から出たボロを有効活用した完全有機農法で、最近では馬よりも野菜でその名を知られているとのこと。なるほどそう思って食べれば、このゴボウも一味違って感じられよう。実際ちゃんと美味い。

 

何か所かに立ち寄りながら築地を目指して歩く。そうこうするうちに時計の針は12時に近い。さっきそばを食べたばかりだというのに、もう腹が減って来た。井之頭五郎か、オレは?

 

やはりうどんを食わねばならんということであろう。ならばいい店がある。昭和通りを渡った木挽町に暖簾を掲げるうどん店「太常」は、江戸時代から江戸時代から五代続く八百屋さんが始めたという変わり種。その歴史溢れる佇まいと、野菜をメインに据えた変わったトッピング目当てに、海外からやってくる客も少なくないそうだ。

 

注文はセルフ式。注文したうどんを受け取ったら、天ぷらなどのトッピングをお好みで取ってレジに進むスタイルだ。かけうどんに加えて、ナス、舞茸、ミョウガ、スティックセニョール、ズッキーニ、そしてアボカドの天ぷら6点勝負。メジャーな海老とかイカといったタネはそもそも置かれていない。野菜オンリー。これらをすべてトッピングすると、豪華天ぷらうどんが完成した。

 

ズッキーニを天ぷらで頂くのは初めてだが、銀座の名だたる天ぷら専門店がこれを出さないのはもったいない気がする。それくら美味い。個人的に天ぷら最強説を唱えるナスに肉薄してきた。ほかにも香りが際立つミョウガや、「サクトロ」食感のアボカドも癖になりそう。天ぷらにばかり目が行ってしまいがちだが、もちろんうどんの旨さも折り紙付き。先週は肉うどん三昧だったから、バランス的にはこれくらいでちょうど良かろう。

 

 

 

 

 

***** 2023/12/13 *****